私は重松清さんの小説が大好きなのだ。友人に紹介してもらって去年あたりから。
彼の作風は、家族関係とか学校内人間関係とかの負の部分をそれこそ"えぐる"ように描き込み、ストーリー的に追い込みをかけてくるのが特徴だ。だから、こちらもコンディションのよい時に読むことが肝要で、めげている時とか落ち込んでいる時に読むと落ち込むこと必定だから注意が必要なのである。
さて、この『疾走』は、今まで読んだ中でも比類なきほどの追い込みのかけ方なのである。読み進むほどに辛くなる。活字だけでこれだけ追い込まれ感を感じさせるところにこれを名作と呼べる所以があるかもしれない。
正直、何度か中断期間を置いた。少し読み進めては気分的に苦しくなって、しばらくやめるみたいな・・・図書館からの2週間の借りだし期間を3回くらい更新したかもしれない。
また、この本の表紙がすごい。なんかムンクの叫び様の絵なのだが、一瞬ぎょっとする感じだよね。実際、職場の机にぽんとこの本を置いておいたら、「おっ」とつぶやいてた人もいたくらいだから。
追い込みをかけまくるストーリーが特徴の重松ものと言えど、今まで読んできた中では、ここまでの追い込んでくるストーリーは珍しいと思うのだ。今まで読んだものは、なるほど、いじめとか家庭内暴力とか離婚とか色々追い込みをかけてくるものの、最後には希望の光が一筋見えつつ終わるという読後感のものが多かった。そう、パンドラの箱を開けてこの世の災厄が次々と飛び出てきた最後に「希望」が顔を覗かせたという感じに。
(以下ネタばれあり)
この『疾走』は本当に救いがない。追い込みをかけたまま終わるという感覚。
表紙のぎょっとするイラストに寸分違わない救いのないストーリーである。だからこそ表紙のイラストと含めて名作と僕は思うのだで、追い込みをかけられてもそれを消化できる自信のある方はぜひどうぞ♪