今日の一語り

しがない勤め人、大津 和行(かず)、のキーボードから紡ぎ出される日々語り

「もてない」ということにも社会経済情勢が絡んでいたわけだ


  今日、2007年2月19日朝日新聞9面の「時流自論」というコーナーにて本田由紀さんという学者さんが次のようなことを書いていた。



労働政策研究・研修機構が都内の18〜29歳の若者の働き方を01年と06年の2時点で比較した調査結果によると (中略) アルバイト・パート男性の06時点での年収は平均約174万円である。この水準の収入では親から独立して家庭をもつことは難しい。実際にアルバイト・パート男性の4人に3人は親元に住み、有配偶率は1.5%で、正社員男性と比べ大きな差がある。


 なかなか面白い論評で、最近の非正規雇用者(パート・アルバイト)の個々の若者が親に依存しているというミクロな見方よりは、経済の全体的なシステムが親の含み資産をあてにしているというマクロな見方の方が現状にフィットするのではないかという指摘で、"企業の「家族依存」を正せ"と指摘している論評であった。非常に感心させられたものだが・・・引用した部分にてはたと気づいたことがある。


 私は「もてない男のその後の語り」(以前は「もてない男の心の語り」。結婚後、改称)というサイトをメインホームページとしてやってきたし、そこからの流れでこのウェブ日記を始めているので、もともとはそちらの読者でこちらに来て頂いている方も多いとは思うが・・・まぁ、「もてない」ということを真摯に考えるところが受けて今に至るまでホームページを存続してこられているわけである。


 私が「もてない」ということは単にステディな異性がいないという状態とあいまいに定義したまま語り進めてきて今に至るが、要は引用にあるように・・・「もてない」というのは社会経済情勢と密接に関わることなんだろうということに気づいたんだ・・・今さらながら。


 実際、学生時代の恋愛ごとはともあれ、社会人になって以降・・・というか、学生時代を過ぎて以降の年齢に達した場合、まずは親元から独立するだけの収入があるということが前提条件だということが前述引用から明らかに分かるわけだ。


 学生時代の恋愛ごとは、結婚までは意識しなくてもいいモラトリアム時代の特権とも言うべき部分もあるわけでそのへんの気遣いはあまり必要ないわけだが・・・社会人となるとそうは言っていられないということがデータで示されているわけで。要は収入がなければほぼ結婚ができないよという如実なデータだったりするわけで・・結婚ができないと言うことであれば恋愛もまた難しいと言うことになるわけで、となると、それはひいては「もてない」状態であるわけで。


 「三十路未婚はどうなのよ? 〜データで迫る30代未婚〜」(もてない男のその後の語り内)を語る際に、31歳の未婚率というものを調べたことがある。男性のほぼ半分は未婚であり・・・ということが分かったりしたのだが・・・


 私自身は、その頃は親から経済的に独立していたし、その上で、「もてない」ことに悩み、語っていたわけだが、最近の格差社会が極めてドラスティックに出てくると、まずはそういうある種悠長な悩みより、正社員になって収入を得ねばそのことに悩むことさえ許されじという厳しさが出てきたように思われる。


 例えば、がんばったにも関わらず運悪く正規雇用に至れず、非正規雇用状態で親元にいる若者が、親に「もてない」ことを嘆いたら、「そんなことより、しっかりしたところに就職しなきゃ」と一言のもとに却下されてしまうのは容易に想像がつくわけだから。


 なんだか格差社会っていろいろ世知辛いものだなと思ってみたりする。「もてない」ことを語るにも資格がいる感じになってきたわけだから・・・なんて感じてみたわけで。


 いや、昔からある程度はそういうことはあったわけだけど、ここまで不況でなく、見通しが暗くなかったせいもあるし、少子化問題も深刻ではなかったこともあり、ここまでドラスティックには出てきていなかったような気もして・・・そう、私が「もてない」を語り始めた1998年頃は。