今日の一語り

しがない勤め人、大津 和行(かず)、のキーボードから紡ぎ出される日々語り

朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 (新潮文庫) NHK「東海村臨界事故」取材班 を読んで


朽ちていった命:被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)

朽ちていった命:被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)

 なぜこの本を読んだかというと、先日、茨城県の大洗に行ったから。
 大洗タワーに昇った時に、展望台の上なので、見える施設名称を見ていると、大洗から海岸線沿いに南・・そう鹿嶋の方に原子力施設があることが分かった。そう言えば、日本で初の原子力の火が灯ったと言われる東海村茨城県ではないかと調べてみたら、大洗町の海岸線沿いに北の方。大洗はなかなかに見事な漁港で、海産物も豊富にあり、いいところであったが、それを挟むように原子力施設があるのだというところで複雑な思いに。
 かの東日本大震災での福島原発の事故以来、福島の果物とか茨城の野菜とかに手が伸びなくなっていた。茨城に行ったのも、かの震災の記憶がようやく癒えてきたからとも言える。

 でも、東京近郊の大都市首都圏を支えるために原子力施設が茨城や福島と言った東京周辺区域にそのような危険な施設が置かれていたというところに、東京生まれである私は複雑な思いに駆られざるを得ない。

 そういう思いから、原子力について学ぼうと思って行き着いたのがこの本。東海村臨界事故・・・これは私の記憶にもある。
 でも、この本を読むに、そのむごさに正視に耐えないものを感じたし、原子力がどれほど恐ろしいものか・・・分からさせられた。

 原子力が必要か否か、その圧倒的なエネルギーを制御しきれるものなのか。

 原子力のように圧倒的なエネルギーに頼らなくても、もっとスローに生きていくことができれば、それがいいのだろうが、現代文明はそれを許さない部分もあるだろう。

 非常に難しい部分であるが、抽象的にそのような議論をする前に、この本に書かれた事実は、圧倒的な説得力を持って原子力のエネルギーの巨大さおよびそれに伴う危険性を示唆してくれている。
 福島原発の事故があった今こそ、この本は再読されるべきだろうと確信する。
 

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