今日の一語り

しがない勤め人、大津 和行(かず)、のキーボードから紡ぎ出される日々語り

重松清『流星ワゴン』を読んだ

 今日日曜日・・・朝起きて、なんかぼーっとして、でも、テレビのようなどぎつい映像メディアだけを見るのはちょっと刺激が強すぎる。もう、がちゃがちゃしたテレビ番組はいいよ・・・。

 そんな思いの今朝、静かなピアノ曲をかけながら、読みかけだった、最後の一節が残っていた重松清「流星ワゴン」を読了した。
  
 苦しい。かなり苦しい。そんな小説。どうしてここまで追い込みをかけてくるのかという不幸をたたみかけてくる展開。重松ものはいつもそういう家庭内の不幸をたたみかけてくる展開だが、これはその中でももっとも苦しいものといってよい。

 でも、とってもいい小説だと思った。苦しすぎて、途中途中で中断期間をはさみながらも読み終わるのに何週間もかかったのだけど、読み進めざるを得なかった小説であった。

(以下本編あらすじあり)


 中学受験を失敗し受験勉強の果て友達を失いいじめに遭い家庭内暴力に走る中学生の息子。何が不満というわけでもないがテレクラを通じて行きずり不倫逢瀬を重ねる妻、そんなめちゃくちゃな家庭を抱えながらリストラに遭い失業中で死にかけの父と人生を通じて戦ってきた38歳の主人公が、もうどうしようもなく死にたくなって出会ったのが流星ワゴン。

 流星ワゴンは心残りの後悔のタイムポイントに戻してくれる。それは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンのように。しかし、あの、お気楽なハッピーエンディングのハリウッド映画と違うのは、そのタイムポイントに戻って人生をやり直してみても元の人生は変わらないということ。

 そこにすごく切なさを感じてしまうのだ。でも、それがまたリアルとも言える。
 私は32歳であるが、この主人公の抱える38歳の葛藤はよく分かるのだ。多かれ少なかれそんな体験をしてきている。

 だからこそ、苦しいしわけだが・・・。
 
 30歳代の男性は一度読んでみるといいと思う。現実は魔法のように解決はできない、苦しい、でも戦わなければならないんだ、対峙して行かねばならないんだ、現実は決してぬるくないんだ.

でも、がんばろう・・・そんな気になれるはずだ。