今日の一語り

しがない勤め人、大津 和行(かず)、のキーボードから紡ぎ出される日々語り

映画「プラダを着た悪魔」を見た


 映画「プラダを着た悪魔」( - goo 映画 )がテレビで放映されていたので見たのだ。


 なかなかに面白かった。ひさびさに、夢中になって見られた映画と言える。


 要は、主演のメリル・ストリープさんの怪演とも言える鬼気迫る憎々しい演技が際だって、そして、ヒロインたるアン・ハサウェイさんの美しさも際だちつつ、役者陣の演技のうまさがまずはいい。


 それらの演技を見るだけでも「時間返せ」的な映画とはなっていない。


 でもね、演技だけで私は映画を面白いとは言わない。まぁまぁくらいにとどめるだろう。


 面白いと言うからにはストーリーのプロットに心の琴線を打つものがなければならない。


 なにが面白かったかって・・・


(以下ネタばれあり)


 




 ファッション業界のトレンドリーダーたるメリル・ストリープさん演じる女性はあくまで仕事に厳しいものの絶大なる成功を収めているが・・しかしプライベートではうまくいっていない女性。ヒロインはその鬼のような上司に仕えるファッション的にはさえない若い女性なのだが、まぁ、アメリカ的と言おうかそこで才能を花開かせ、一躍ファッショナブルなできる女として花開くという展開。


 まぁ、そのままのサクセスストーリーで終われば、やれやれいつものアメリカ的楽天主義だなぁと思わされるところであるが、結局そのヒロインはそのサクセスを捨てて、仕事のために切れかけたステディな彼との縁を引き戻し、本来的に目指していた地味なジャーナリストの道を歩むというどんでん返しのストーリー展開がいい。


 そして、メリル・ストリープさん演じる鬼のような女(だから、プラダを着た悪魔 なんだろうね)は、その行く様をうらやましく思いながらも、自分は自分の仕事の道を行くという展開。


 要は、アメリカ的な上昇志向絶対主義へのアンチテーゼとなっていてとても面白かったのだ。


 この映画は2006年の作品であるが、上昇志向絶対の限界をアメリカ自身も感じてきているのじゃないかなと感じさせられたわけで。


 上昇志向を持って向上するのはいい。でも、それが自分の幸せにつながらない・・・ヒロインの地味な服に戻った後のさえないながらも幸せな様子に比して、派手なバリバリなキャリアウーマンながらプライベートは決して幸せでないプラダを着た悪魔というコントラストに見事にそのことが浮き彫りにされているんじゃないかな。それを表現し得たメリル・ストリープさんの怪演もすごい。


 アメリカ映画自身がアメリカの上昇志向絶対主義への疑問符を投げかけているという点で、この映画はとてもユニークな視点を持っているんじゃないかなって思うんだ。そして、それがこの映画のすばらしさと思うんだよね。