今日の一語り

しがない勤め人、大津 和行(かず)、のキーボードから紡ぎ出される日々語り

湯河原と国木田独歩に思う

 先日、湯河原に行ったわけだが、 これは、もしかしたらの生まれて初めてかもしれない。私は関東にて生まれ育ったわけだから箱根と並ぶ関東の代表的の温泉地である湯河原には行っていてもおかしくはなかったのだが、私の記憶にある限りそれまで行ったことはなかった。

 行って、独歩の湯という足湯施設に入り、そっか、独歩かと思ったわけだが・・・ゆかりがあったんだろうなとくらいに感じているだけだったが、家に帰って思い出したらそういえば、私は非常に国木田独歩の著作を読んでいたことを思い出した。

 北は仙台の地で学生生活を送っていた時に、大学の教養の授業で、多分、国木田独歩の研究者であったであろう先生から授業を受けたことがあった。そもそも、授業のテキストが国木田独歩の小説であり、その本を読みながらの授業で、とても少人数の授業で、かなり濃密に独歩の著作を輪読のような形で読み込んだ思い出がよみがえってきたのだ。

 国木田独歩と言えば、代表作は「武蔵野」であろうか。試験に出るからと、文学史の問題として、国木田独歩といえば・・ぴんぽーん、武蔵野 なんて感じで覚えている諸氏は多いかも知れないが、実際に読んだ方はそんなに多くないのではないだろうか。
 私は、実際に「武蔵野」を読んだ記憶はあると思うが、あまり印象にない。

 家に帰って・・・青空文庫http://www.aozora.gr.jp/)で「武蔵野」を読んでみたが、うーん、なかなか難解であった。まぁ、昔読んだ時もそうだっただろうか。

 そして、湯河原がらみの独歩の著作を、かの授業で読んだ「湯ヶ原ゆき」「湯ヶ原より」というのをやはり青空文庫で読み返してみたら、鮮明に思い出した。そうだ、これは読んだことがある。

 そして、仙台の地で学んでいた私にとって、湯河原というのは行ったことがないけれども、関東出身者として身近な土地の名前で親近感を覚えつつ、またその短編が非常に読みやすかったので非常に興味を持った思い出が思い出されてきた。

青空文庫内:作家別作品リスト:国木田 独歩


 読み返しながら、そうだったそうだったともう20年以上前にもなる学生時代に読んだ時の感覚がよみがえってきた。これらの短編では、国府津まで汽車で行き、そこから人車鉄道に乗るとなっている。
 私自身、幼き頃は鉄道少年的であったから、思い出した・・・昔の東海道線は、今のように海沿いを走っておらず、今で言う御殿場線のところを走っていた(要は、海沿いを走っておらず、内陸を走っていた)ことを。
 独歩が湯河原に行った頃は、国府津からは人車鉄道と呼ばれる、人が押す軌道鉄道であったらしい。そのうち、東海道線は海沿いを通り小田原−熱海に抜けるようになり、御殿場線は今のように廃れてしまったわけだが。
 人車軌道のことも授業で先生が教えてくれたが、やはり、写真もないところで想像にまかせられる部分もあったが・・・今はインターネットという便利なものがある。

熱海鉄道 - Wikipedia

 こういったものが、独歩が乗ったものだったと容易に想像が付く。

 どちらの短編も非常に面白かった思い出があるが、それが、今回、湯河原にたまたま出向いたことによりよみがえり、そして、実際にその地を歩けたことをとてもうれしく感じた。

 20年以上前に感じた、その思いを、思いをはせることができた偶然。

 国木田独歩結核でなくなったらしい。当時は不治の病であったことだろう。享年36歳だったとのこと。湯河原には結核療養に来たようだ。確かに、短編を見てもそれはそう思われた。

 私はもう独歩の享年を何年も超えている。しかし、なにをしたかって・・・とりあえず、生き抜いているくらいだ。何かしら残したいと思わぬでもないし、また、若くして亡くなるも多くの文学作品を残した独歩を思うに、日々をがんばりつつやっていかねばと思った次第である。